「ダメだ。」

タクが先生を睨みながらキッパリと言う。


「琉那はまだ高校生なんだ。この先の長い人生、そんな汚点があったら困ることが山ほどあることはわかっているだろう。」

そんなシチュエーションに遭遇したことはないけれど…

さながら、娘は嫁にやらん、という父親のようで

ピリピリとしたムードが、息苦しさを増していた。


「絶対に学校にはバレないようにやります。」

先生も熱く返してて…

私は一人少し入り込めていない…。


「お前には無理だ。琉那がもし、他の男に告白されるとする。そこにいれば、お前は飛び出さずにはいられない。そうだろう?」

何という例え話だろう…

と思ったのに

「っ…」

図星だったのか、先生の言葉が止まる。


「だからだ。我慢が出来ないのに琉那と付き合えば…、後悔するのは自分自身だぞ…」

ふっとタクの視線が天井に向く

何かを思い出しているように、悲しげに…


「それでも俺は…俺は…」

そう言った先生だけど、途中で俯き口を噤んでしまった…


「はぁ…。琉那は来年の3月で卒業なんだ…。俺は、琉那が残りの学校生活を楽しくすごしてくれればと思ってる。だから、お前の意見には賛成なんだ」

「タク…」

名前を呟くと

タクがこっちを向いた


「琉那…これからは、教師としての先生を頼ってみろ。そして高校生活を終えて…卒業してからの返事は、琉那自身がすればいい」

タクにそう頭を撫でられながら優しく笑いかけられ

私は「うん」と一つ大きく頷いた…。