憂鬱だ。

街を歩きながら思った。

ちらちらと僕を見る人たち。

その大半は男の人。

僕は俯いて溜息をつく。

こんな外見に生まれたくなかったよ。

長い黒髪は癖毛で、ゆるふわカール。

目は明るい茶色。

二重がくっきりしている。

眉毛は描いたようにシュッとしている。

睫毛が人より長い。

顔が小さい。

足が長い。

体質なのか、肌が白い。

いわゆる化粧顔。

背が低い。

出るべき所が人より出ている。

特に胸。

僕はこの外見のせいで‥‥痴漢、とか

そういう類の被害によく遭う。

電車に乗っている時とか。

学校でもよく告白される。

僕の外見が好み、だと。

普通の女の子なら喜ぶだろう。

だけど全然嬉しくないよ。

僕自身を見てくれる人はいないから。

‥‥少なくとも、学校には。

僕のお気に入りのカフェの、美那さんは違う。

いつも笑顔で、僕を見てくれる。

内面を見てくれる。

そして、まるで姉のように接してくれる。

だから僕は美那さんを姉のように慕う。

尊敬してる。

一人の、女性として、美那さんを。