人類が地球という母から旅立ちを向かえたのは、もうはるか昔のこと。

 発達した人類の科学の力は途方もない豊かさを人々にもたらしたが、それに伴う環境汚染という弊害により、地球という母を内から蝕み、美しい緑の惑星は、人類のエゴイズムによって死の惑星へと変えられようとしていた。

 死にゆく惑星を救うべく、人類が下した決断は「惑星移住化計画」――

 培ってきた科学力を用い、人々を宇宙(そら)へと送り出す。

 人類が始めて宇宙(そら)へ旅立ったのを忘れないため、その年から西暦を「宇宙暦」と改められた。

 宇宙暦、元年より――

 惑星移住化計画の当初は失敗と苦難の連続だったものの、人類は次々と太陽系の惑星へと移住を果たし、死の星になる運命を待つばかりだった母なる地球も、人口の減少のおかげで失っていた自己の回復能力が戻り、再び膨大な時間をかけて緑の惑星へと再生をはじめた。

 そんな惑星移住化計画を敢行して、数世紀――

 宇宙暦が1500年を過ぎると、宇宙(そら)へと旅立った人類はその星での安定した独自の生活を築き始めていく。

 各惑星には星単位で「政府」が置かれ、それぞれ独自の統治がされている。

 その星々で生活様式は違えども、地球でいた時代と遜色がないほどの豊かな暮らしを送る日々。

 住む星は変わっても、自分たちのルーツは母なる地球である。

 その思いを胸に刻み、自分たちが生まれ育った惑星で生活を送っていく――そんな日々を続けていた。

 豊かになりすぎた人類が、再び愚かな思考に囚われてしまうまでは――……