「……でも、俺を産んだのは契約を守る為だろ…?俺が邪魔だと思わなかったのか…?」
言い終わるのと同時に俺は今日初めてシャンパンに口を付ける。
甘い香りが口いっぱいに広がった。
俺は反らしていた視線を少しずらし、親父を見ると、真剣な表情を俺を見つめていた。
それに俺は視線をずらせなくなる。
「…思うわけないだろ。お前を産んだのは契約を守るためなんかじゃない。幸せな家庭を作りたかったからだ」
「………」
「お前が物心がついたときは、私の父から譲り受けた会社がうまくいっていて、それに夢中だった…。母さんも私の体調管理を見るのに精一杯だった…。
その結果お前に悲しい思いをさせてしまったが…。
幸せな家庭を作ることを忘れていた…」


