抱き締める直前に見えた、千春の首にある刻印。 それは紛れもなくキスマークだ。 あの男、元カレに付けられたに違いない…。 胸の底から怒りが湧いてくる。 「……首、キスマーク付けられてる」 「え???」 少し体を離すと、千春はきょとんとし、やっと俺の言葉を理解したのか、慌てて俺から離れて手鏡で首を見た。 鏡から見える千春の表情。 目に涙を溜めて、キスマークをジッと見つめている。 千春、と呼ぼうとした瞬間、千春は自分の首を爪で引っ掻き始めた。