キッチンへ行くと、奥で食器を拭きながら目を真っ赤にしている千春が居る。

それを見て心が罪悪感でいっぱいになった。


「千春…」

俺が千春の名前を呼ぶと、わかりやすく肩をビクッと震わせた。


「ごめん…、今日ずっとイライラしてて千春に当たってしまった…本当にごめん…」

俺は小さく頭を下げ、謝る。

そんな俺に千春は自分の瞳を手で擦り、いつもの笑顔を見せた。


「大丈夫だよ…っ!ちょっとビックリしただけだから!でも、イライラしてた時とか言って。翔君、そういう時って体調が悪いとかあるから」


まるで俺のお母さんのように言う千春に笑ってしまった。


「わかったよ」


…何となくわかったかも。


このイライラしてしまう不思議な感情の正体を──…。