啓太は呼びかける。

…無論、啓太の部屋には彼一人しかいない。

つまり彼が言ったのは独り言。

その筈だった。

しかし。

「…また啓太はそんな気の弱い事をウジウジ言ってるの…?」

突然。

啓太が豹変した。

一瞬目を閉じたと思った瞬間、彼は口調も、表情も、性格さえも変わる。

元々可愛らしいとさえ言える啓太の顔立ちだから違和感は然程感じられないが、その物腰、喋り方は『大人の女性』といった風情。

啓太…の姿をした『彼女』は前髪を掻き揚げた。

その仕草は、どこか妖艶ささえ感じさせる。

「どれ…私が一つ占ってあげるわ」