「いえ…私がロシア連邦のエージェントである事までは知られていないとは思いますが…」

アリスカは苦虫を噛み潰したような表情を見せる。

月…あの少女の『読み』は、単に洞察力や推理力に優れているというレベルのものではなかった。

『読心術』といっても過言ではないだろう。

超能力や魔術の類を疑いたくなるほどの的中率だ。

ロシア大統領の直属として国家の安全を守る為、命令一つで世界中を飛び回る国防のプロフェッショナル…齢十六にしてそんな任務を与えられたアリスカが、そのような非科学的なものを信じるには、相当な抵抗が感じられた。

ともかく、白神 月には注意しなければならない。

月が心配するような、学園の生徒達を危険に晒すような真似をするつもりはないのだが、あまりこちらの素性を知られると、任務に支障を来たす場合もあるかもしれないのだ。