「という事は、そのケースにはバイオリンじゃなくて銃が入っているのね。ドラグノフっていうのがどんな銃なのかはよく知らないけれど…」

おっとりした表情のまま、しかし月の笑みは狡猾さを帯び始める。

「狙撃が目的となると、アリスカさんはテロリストか何か?それともロシアから来た工作員か何かかしら?」

「……」

足場をしっかりと確保する。

(生徒会長なんてとんでもない…この女、とんだ食わせ者だわ。コイツが拳銃でも抜いたりする前に離脱するか、距離をとって狙撃で仕留めるか…)

アリスカの表情に緊張が走る。

「あら」

月は顎に人差し指を当て、またも微笑んだ。

「私は拳銃なんて持ってないわ。公明正大、品行方正が売りだもの」

「っっっ!」

この女、思考を読んでる?

となると何をしても先手を取られてしまうではないか!

「私はね、アリスカさん」

一歩前に出る月。

丸腰の月に対し、狙撃手であるアリスカが気圧されて一歩下がる。

「この天神学園の平和と安寧を守っていたいだけなの。だから転校生の素性は例外なく『読ませて』もらってるし、何か不穏な事を考えているようなら容赦はしないわ」