黒服の一人が思い出していた。

確かロシア連邦に、若干16歳のエージェントがいるという。

歳若いがその狙撃手としての腕は超一流で、アメリカ合衆国の敏腕エージェント、レイ・マードックとも並び称されるという。

この女がそうか…。

黒服の指が、拳銃の引き金にかかった。

「あ、アリスカさんっ!」

僅かに身を乗り出す啓太。

しかし彼もまた、黒服によって取り押さえられてしまう。

「……」

アリスカに拳銃を突きつけた黒服の眼が、冷徹に輝く。

この娘は俺達の顔を見ている。

生かしておく訳にはいかない。

「っ……」

その思考を読んだ月も息を飲む。

(この男達…信じられない…本気で殺すつもりだわ…!)