シーを、ただ人間になれるだけの猫と侮ってはいけない。

線が細い印象とは裏腹に、人間の姿になった彼は常識外れの跳躍力を持つ。

猫が人間サイズの大きさになれば、ちょうどこのくらいのジャンプ力を有する事になるのだろう。

人間の姿になった彼ならば、この建物を軽い跳躍で飛び越える事すら可能なのだ。

たとえアリスカを背負ったままだとしても、3階に飛び込む事などたやすい。

策士の月はシーの跳躍力を利用して、アリスカ達に奇襲をかけさせたのだ。

それが功を奏し、見事アリスカ達はソフィアの奪還に成功した…かに見えた。

「月達に成功したって伝えないと」

窓の外に視線を向けるアリスカ。

その瞳に飛び込んだのは。

「っ!」

拳銃を突きつけられて手を上げている月、アスラ、啓太の姿だった。

…犯罪組織は、この建物の連中だけではなかった。

迎えに来た更に10名の黒服達が、加勢したのだ。