ぶつかりそうになったシーが廊下に爪を立てて急ブレーキをかける姿を見て、月とアリスカは目を丸くする。

「どうしたのシー先輩、そんなに慌てて」

「そういえばソフィア先輩が、シー先輩の事探していましたよ?」

事情を知らないアリスカ、いつものようにおっとりとした口調で語りかけてくる月。

そう、まさにそのソフィアの件でシーは走り回っていたのだ。

ソフィアが悪い奴らにさらわれた!

その事を二人に伝えようとまくし立てるものの、当然猫の姿でニャーとかフギャーとか騒いでも二人には伝わらない。

「落ち着きなさいよ先輩、まずは人間の姿に戻ってさぁ…」

苦笑いするアリスカ。

(そうかっ、流石アリス!)

シーは瞬時に、アリスカより頭一つ背の高い男子生徒の姿に変貌するが。

「にゃあ!ぎゃあっ!うにゃにゃにゃにゃっ!ふぎゃあっっっ!」

慌てているのか、口走る言葉は猫のそれと大差がなかった。