先生が
ポケットに手を突っ込んで
戻ってきた。


『ほらっ。手ぇ出せっ』


あごをくいっと上げて

先生は
バスケ部員がいる方に
背を向けた。


なんだろ…?


私と千晴が手を出すと

先生はポケットから
紅茶缶を2本取り出した。


それをこっそり
私たちに手渡す。


手渡される時に
少し指がふれた。


先生の指が…



ホット缶を
のせた手のひらが
熱くなる。


熱くなったのは
缶のせいだけじゃない。


先生が
千晴を見てから

私を見つめる。



『お前たち…わざわざご褒美もらいに来たの?』


先生は
私の大好きな顔で笑う。


『寒いから暖まって帰れよ。
また明日な』




体育館の中に戻っていく
先生の背中を見つめて



もらった缶を
両手で包んだ。



ただの紅茶缶が

先生の手で

宝物になる。




もったいなくて

飲めないよ…



先生―…