先生とひよ子


『あ…待った待った!』


車から降りかけた私の腕を
掴む先生。



え……?


振り返ると

少し困った顔の先生。



『返したのは…こと美氏だけだよ』



『…え…?』


先生はゆっくり私の腕を離すと
困ったように少し微笑んだ。


『だから…内緒な?』



先生の言葉に顔が熱くなる。


先生…


そんなの…


期待するよ…


先生…



『なんで…私には…』


返してくれたんですか…?


半分開かれたドアから
冷たい風が吹き込む。



先生は迷っているように
腕を組んで体ごと少し俯いてしまった。





『…せんせ…?』


期待で変になりそうだ。