人が死ぬところが見たい、と奴はのたまった。




なんてったって万年中二病、プラス色濃く自殺願望なんかもっちゃってるこの男。来年で三十路ですぅ。な、長篠ハルオキさんは私の十年来の片思いの相手だったりする。

「ちぃちゃんさぁ」
ハルオキさんは中身はくそみそに腐ってるくせに見た目だけはいい。あと声もいい。
「大学出たらどーすんのぉ」
語尾をのばした喋り方にいらっとくることもあるけど、まぁそれもいい。
「…どーもしない」
「ふーん。まだなんも考えてないんだねぇ」

ふだんどんな仕事をしてるかもわからないあんたに言われたくない。
しかしてハルオキさん、一番痛いところをついてくる。本当に、いつもいつも。

やりたいことなんか見つからない。これがしたいあれがしたいって色々手を出してみるけど結局言うほど好きじゃないことに気づくだけ、だ。
時間は有限だって知ってる。

「ほっとけ」
私を好きじゃないあんたなんかに構ってるヒマはないんだよ。もう、
「もうさちぃちゃんさぁ」

縁側に分厚い風がふく。
もう止めようと思ってたのに、

「お嫁にきなよぉ」

わらう縁側のハルオキさん。
あああもう
しぬ。

風にかき消されたはずの比喩はどういうわけかハルオキさんの鼓膜をふるわせたらしい。

「そう、そうなんだよ、ちぃちゃん」

あああ喜んで損した。
この万年中二病男は冗談でできているんだった。
ひとがしぬところがみたいとのたまったハルオキさんは、その日嬉々として私を抱いたのだった。







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