『私が桃とレアチーズケーキ好きだってことを知っててせっかく作ってくれたんでしょ! 喜んで頂きます!』

 
 頬を膨らませながら言った後、すぐケーキにフォークを指して食べ始めた。


“やれやれ……”

 と思いながらも、その美味しそうにケーキをフォークで口に運ぶ様子を見ながら、俺も玲亜の前の椅子を引いて座る。


 肩肘を立てて手の平で顔を支えながら俺が見てても、玲亜はまったく気にしない。


 そりゃもう美味そうにパクパクとケーきを口に運んでくれるから、作った俺に言わせてもらえば、嬉しいことこの上ない。


 そんなこと思いながら食べているのを見ていると、ふと玲亜が食べる手を止めて、見つめていた俺の顔を見上げてきた。


『なっ…』

『ねぇ、聖』

『…なんだよ』

『聖のこと大好きだから』

『はぁっ?』

『だから!! こうしておいしいケーキ作ってくれる聖も!

魔法のカップで癒してくれる聖も! みんな大好きよ』



 …………。


 ……そんな……


 右の頬にレアチーズのクリームつけて、桃色に染めてるのに、大人っぽく微笑んで真正面から見つめるから……

 俺は…。


 フイッ、!

 あぁ!

 また視線が合わせられなくなったじゃないかっ!!


『……聞き飽きた』

『え~、またそんなセリフ?』


 格好悪くも、前にも何度も聞いたからと言う理由をつけて、視線逸らしたまま呟いた俺に、玲亜は怒っていたけど、俺は顔を振り向かなかった。 



 ……少なくとも、この頬の熱が冷めるまでは……。



 なぁ、玲亜。 俺もお前のことが好きだったんだぞ。


 あの時は……お前があまりにも

 ……綺麗だったから…。

 クリームつけてても綺麗だったから……

 言えなかったけどな…。



 …なのに…どうしてだ……。
 


 ……なんで、あんなことに……。

 



 …………俺のせいだ…………。