『だって聖がいつも描いてくれるカフェに浮かぶラテアートは、それこそいつも明るくて楽しくなるイラストが描かれててさ。

それを見るとこっちも心が癒されてくるから楽しくてすごく大好きなの』


 カプチーノに浮かぶ猫のラテアートを嬉しそうに見つめている。


 艶やかなウエーブカールが入っている金茶色のウイングウェーブロングヘアの端を指に絡めると俺のことも見つめて、


『聖がカフェに描いてくれる心が伝わってくる気がするから、大好きなの』


 と、更にどこか嬉しそうに微笑みかけてくるから…。

 俺はまた顔が赤くなってくるのを感じて、とっさに玲亜から視線を逸らした。


『そ、そうか……』

 このいつも大人っぽく、美人に見える微笑み。

 これを向けられていつも顔を赤くしてしまう俺の気持ちも考えろよっ、と内心で舌打ちをしたてた。

 そんな俺の気持ちも知らないで…。ほんと、腹立つ女だ!!


『ねぇねぇ、なんで顔こっちに向けてくれないの~? もしかして、テ・レ・て・る・の~~??』


 ……どこまでも人の気なんかまったく気にしてない声がまたしてきた……。


 見かけだけ大人の馬鹿女に、俺は無言で再びテーブルまで行った。


 そこに、今さっき切ってやった桃のレアチーズケーキを皿に乗せて目の前にバンッ!と出した。


『うるさい、黙ってこれ食ってな!』

『!!あら、おいしそう!!』


 ついさっきまで俺の顔を見て面白そうな顔をしていたくせに、ケーキを見るなり眼の色を変えて満面の笑みを浮かべたよ……。


『わぁ、今回のもまた可愛いケーキね。

 この淡い黄色のレアチーズケーキにピンクのゼリーが上に重なって。

 その上にピンクのアラザンと花のチョコがバランスよく飾られてていい感じ!

 あぁ~、食べるのもったいないわぁ』

『……じゃあ食わなくていいぞ』


 目の前のケーキにすぐ手を付けず、ペラペラと……。

 もう呆れて取り上げようとしたら、


『ダメダメ!』


 と、すぐ俺の手から取り返して、〝取られるものですか!〟と舌を出してきた。