こいつ……!


「ふざけるなよ!   何をどうやったら

起こしに来たやつが隣で一緒に寝てる結果に繋がるんだよ!!」


 また殴ってやりたくなる勢いを押さえ込みながらも、拳を握って大声で怒鳴った。


 朝はだるいのにこんなに大声出させて。

 余計イライラしてくる……。


 次々と神経を逆なでされる行動に憤慨する俺を、さすがにまずいと思ったのか

 ガキは急に両手を前に出して俺の怒りを抑えるように大きく振り


「その前に何度も肩叩いて名前呼んでたんだよ~?
 でも、聖ちゃん、うるさいって言ってばっかりでさぁ……」


 焦りを顔に出しながら必死に言い訳をしてきた。
 
 ……いや、これは言い訳だな。

 もうさっさと追い出すことしか頭になかった俺にはその言い訳に聞く耳もなかったから、ガキの片耳を掴んで、

「黙れよ」

 と言った。


 普通こうすればすぐ嫌がるものなのに、耳を掴まれたガキは〝痛い〟と言わず

 さっきまでの言い訳をしていた口を閉じるなりハッと目を見開いて

〝ヤバい……〟なんてことをボソッと呟いてきた。


 しかも俺ではなくて、扉の方を見てるし……。

 ついその目線を辿って見たけど、別に何もヤバイ物なんかないぞ。


 は?
 何がヤバいんだ??
 何も起きないだろうが……。
 
 
 まったく何も起きない部屋の扉に向かってのセリフに、改めてこいつなんなんだと思った時……。


「ちょっと聖~! もう起きてるんでしょうねぇ?」


 ガチャッ


 前触れも無く廊下から母さんの声がしたかと思ったら

 いつものノックもなしにドアが勝手に開き、


「あら……」


 と入ってきた母が、
ベッドの上にいる俺と
ガキを目にし

 そのままドアの入り
口で目を丸くして固ま
ってしまった。



 無理もない!



 男である俺の部屋の一つのベッドの上に

(これでも一応女の)
ガキが布団に並んで入っているのだから……。



 しかもいきなり母さんの声に俺もヤバいと思って、咄嗟にガキの耳から手を放したまではよかったが

 その後バランスを運悪く崩してガキの上に覆うかぶさる様な格好になってしまい

 それを見られて今の状況だ。


 ヤバッ……!! 


 そう思ってすぐ起き上がったけど、呆気に取られて立ってた母さんはすぐ嬉しそうにニッコリと笑みを浮かべて、


「まぁまぁ、なるほど~。こういうことだったのね♪ 月菜ちゃん」


 と、部屋に入りながら近づいてきた。