聖ちゃんは眼を細めて、電気のついていないくらい廊下から見える扉をよく見ようとし、驚いて、


「いつの間に……」


 とかって呟いて、その部屋に近づこうとした。


 わー、入るつもりなんだ!


「ダメダメ!」


 月菜は前に立って両手を横に大きく振りながら

 できるだけ小声で叫んだ。


 さすがに廊下で大声はまずいからね……。



「なんでだよ」



 行き先を防がれた聖ちゃんは、また不機嫌な顔をして睨んでくるし。


 こわぁ~……。

 ホント短気なんだから……。



「ただ単に部屋に入って欲しくないだけ。

部屋がどこにあるのか分かっただけでもいいでしょ」


「人の部屋には入っておいて

自分の部屋には入るなって言いたいのか?」


「そうじゃないけど、今日はもう疲れたの。

すぐ消える部屋じゃないじゃん。

明日でもまた今度でもいいことでしょ?」



 機嫌の悪い顔は怖いけど、意見は変える気ないから言い切った。



 両手広げたまま立って睨み返してると

 聖ちゃんはハァッと溜め息吐いた。



「明日もまた今度も見れる部屋でいて欲しいものじゃないんだけどな」



 眼を閉じて髪をガシガシと掻きながらそう言ってから

 クルッと月菜に背を向けて自分の部屋の方に戻って行った。



「大人しく寝るんだぞ」

「え……、うん。 おやすみなさい」



 低い声で言われた言葉にちょっとどう返したらいいか迷ったけど

 コクンと頷いた。


 月菜の言葉に無言で、パタンと聖ちゃんの部屋の扉が閉まった。


 聖ちゃんが部屋に戻ったから、月菜も両腕を下ろして

 自分に与えられた部屋の扉を開けた。


 今日からここが自分の部屋なんだと、感じながら。