夜21時までやっているそれなりに人からも話題になっているラテアート有名の喫茶店の中。


 広々とした部屋にダイニングセットが3セット。

 
 ダイニング1セットには背もたれと取っ手がついたチェアが6脚ついていた。

 もう閉店で、店にはお客も誰もいなかったが女が一人だけ。


 フードにポンポン付き、リスの模様がある、ゆったりとしたベージュのニットチュニック。


 ニットチャニックの上には寒い季節に大活躍してくれる、とても暖かそうなワインレッドのベストが羽織られていた。

 ダークブラウンのダブルフリンジショートブーツを履い誰もいないテーブルの1脚に座っている。


 当たり前に座っているが、勝手に入って来たんだ……。


 玲亜とは中学の頃に俺が引っ越してきて近所で知り合い、転校先の中学校の同じクラスでも知り合い、それから大学までずっと同じクラスで付き合いが続く腐れ縁。

 一応親友である・熊谷 玲亜 (くまたに れいあ)。


 こいつはよくあることだが、今日も大学の帰りに、

『聖(アキラ)のカプチーノが飲みたいな!』
  
 っとか笑みを浮かべて言ってきたんだ。


 ……最初は面倒臭くて俺は頭を掻きながら、

『もう7時なんだから、本格的に暗くなる前に家に帰れよ』


 と言ってやってたんだけど、


『イヤ!今、すっごく飲みたいの!!ほら早く、お店に行きましょ~♪』


『おい!!こら!!』


 ……なんて形のまま、人がどんなに帰れと言っても聞かずに喫茶店に入ってしまったというわけで。

 店は店でも、一応俺の家でもあるから、無理矢理帰宅させられることにもなって、さっさと準備をさせられるハメに。
 
 玲亜は玲亜で、いつものように俺を家に入れるなり、店の入り口まで走って回って入り既にカウンターのイスに当たり前のように座っていたし。


“ハァ~~~…”

 
 ルンルンと足をバタつかせて呑気に人の用意するものを待っている様子をチラリと見ては、心の中で溜め息を吐いている俺が聖だ。

 須夜崎 聖(スヤザキ アキラ)。

 今は大学1年(19歳)で、この店は母さん自営業で開いている喫茶店でもあり、さっきも説明した通り俺の家でもある。


『早く作って!』


 何度もこうやってうるさく急かすから、仕方なく俺は着ていたコートや持っていたカバンを部屋に片付けて、すぐ準備をしてからエプロンを付けて始めていった。



 コイツは〝カプチーノが飲みたい〟と言った。

 それはただ入れてやればいいのではなく、スチームミルクやフォームミルクを[エスプレッソ]と上手く泡立て仕上げるやり方で。


 更に、【書いて】相手に贈るのだ。