「何だよ、言いたいことがあるなら黙ってないで言えばいいだろ」

 あるなら言ってみろと、手を振って促せば
 人差し指で頬を掻いて首を傾げているガキは数秒間を開けてから俺のことを遠慮がちに見上げて一言言ってきたのだ。


「飛んできたんだよ」

 ………………。

 …………は????


「月菜は月天使(ツキテンシ)だもん」


“何言ってるんだこいつは!?”


 とか言う感情がさすがに顔にまで出てきてしまってたのか…

 じれったそうに両手を拳にして自分の胸の前で小さく上下にブンブン振りながらまた言ってきて。

 だからってそれが納得になるわけも全くないし。
 

“やっぱり頭が壊れてるか、病気なのか??こいつ”


 本気で疑いたくなってくれば、このガキはまた窓の外を指差して俺をキッと睨んだ。


「月菜はちゃんと外から!

窓を開けて入ってきたの!!

空だってちゃんと飛べるんだってば!

力を使えば部屋の中にだって自由に出入りくらい簡単にできるもん!  

なんで信じてくれないのさ!?」


 これまた大声で叫ぶから、煩いもんだぜ…。

 俺は呆れを通り越して疲れてきた…。


「あのなぁ、いい加減なことをペラペラと……

はいそうですかって信じてられる奴がいるなら、そいつの頭こそ俺はイカれてるって思ってやるぞ!?」


 っていうか、もうこんなガキの相手してるのもいい加減うんざりだ。


「なんでもいいから、帰れよあんた!俺は疲れてるんだ!」


 ガシッと垣の手を掴んで、さっさと部屋から追い出してやろうと引っ張ろうとした。

 それなのにこのガキは可愛くなくも踏ん張って、前上がりの首筋ギリギリのレイヤーショートボブの頭をブンブンと横に振って〝イヤ!!〟とか叫んできた。