は? 何言ってるんだこいつ??

 思いもしなかった言葉に呆気に取られて数秒固まってしまった気がするぞ……!

 
 俺はすぐ首を振って目の前のガキと向き直った。

「……なんだって?」

「だ~か~ら!」
 

 聞き返すと目の前のこいつは両手をバタバタさせて怒鳴り

 その両手をほっそりとした腰の括れにあてて言ってきた。



「月菜は聖ちゃんのその傷つい心を癒しに来たの!」


 はっ…(苦笑 
 繰り返されても訳がわかんねぇとはな……。

 ブツケテやりたい感情がありすぎて整理がつかないが、とりあえずだ!


「なんで気安く〝聖ちゃん〟って呼んでんだよ!?」
 いったい誰なのか得たいの知れない奴に馴れ馴れしく口にされたくないあまりに怒鳴れば、

「聖ちゃんが聖ちゃんなら聖ちゃんでいいんだよ! 聖ちゃんの名前でしょ」

 何が可笑しかったのか…キャハハハッ、と子供みたいに笑いながら返事してきて。


 何なんだこいつは……。

「イライラして頭にくるんだ、やめろ!!
そもそもなんで俺の名前知ってるんだ!?」


 怒鳴ってやってもこいつは笑みをまったく消さずに

 逆に〝すごいだろ!〟と威張るみたいに胸を張ってニッとした。


「あったり前じゃん!」

「あんた…実は病気だろ…?」

 ――主に精神のな。 

「失礼だなぁ!月菜は元気だって!これから聖ちゃんの心が癒されるまでずっと傍にいるんだよ!」

 一言も噛まずペラペラ言いきると、俺を指差してニッコリスマイルしてきた。

「当然、聖ちゃんのことは何でも知ってるよ!」

「――って答えになってないぞ全然。逆にあんたへの謎が増える一方ばかりだ」


 会話は全然解決しないし、イライラは倍増するばかり。

 大声出した方がいっそ解決が早い気がしてきた時。

 俺は後ろから冷たい風が背中に軽く当たってくるのを感じて振り返った。

 その先には、部屋に入った時に目に入った、大きく開かれた窓ガラスと外から吹き込んでくる風になびくカーテンが大きくなびいていた。