もしかしたら愛情の裏返し……?
なんてミラクルにポジティブな考えが一瞬浮かぶ。
もしそうだったとしたら……自分はどうするんだろう。
なんて藍楽の仮想は、
「藍楽。お前に客」
「……わたし?」
皇楽に呼ばれてやって来た玄関で、自分を訪ねて来た客人を見て吹き飛んだ。
「ひょ、豹先輩……」
見慣れた玄関先にはわざとらしい爽やか笑顔を浮かべた豹が立っている。
なんでここに……と、藍楽が二の句を継ごうとした矢先だった。
「あれが藍楽にチューした豹せんぱい?」
「わっ! 朗楽くん!」
「バカ! こっち来い!」
静まり返っていた高原家の玄関に朗楽の悪気の無い声が響く。
ひょっこり顔を出した朗楽を慌てた天が引き寄せ、焦った皇楽が咄嗟に口を手のひらで塞いだ……が、もう遅い。
「あっ! 鞄! 鞄持って来てくれたんですね!」
一刻も早く話題を変えようと早足で豹の元に歩み寄り、
「ありがとうございます! 助かりました! そこまで送ります!」
その手から鞄を受け取るや否や、まくし立てるように豹を気まずい玄関から強引に追い出した。

