豹から物理的な距離を取ろうと、さっさと豹を置いて歩いて行く藍楽を、
「守る守るって……おまえ、龍に惚れてんのか?」
「はっ? 何言って……」
「龍が好きなのか?」
不意に豹にかけられた声が足を止めさせた。
冗談を言うなと笑い飛ばそうにも、
「おまえも龍が放っとけないって言うのか?」
振り向くなり飛び込んできた豹の顔は真剣そのもので。
とても笑って交わせる雰囲気では無かった。
レンズ越しの瞳がじっと藍楽を見据えている。
その瞳にさっきまでのような厭味な色は無く、むしろ……何かを求めるような物欲しげな視線に思えて仕方ない。
「おまえもって……」
誰のことですか?
続けようとした藍楽の頭に、昨日の昼休みのやりとりが被る。
豹の中には誰かが居て……その人に伝えたい言葉がある。
言い淀んで口ごもる藍楽とそれを見据える豹の間に、
「豹っ! どうしよ!」
慌ててこちらに走り寄りながら、動揺して上擦った声を出す龍の姿が飛び込んできた。

