吐き捨てるような豹の言葉に藍楽は思わず聞き返してしまう。
「……誰に言ってるんですか。そのセリフ」
「…………」
“どいつもこいつも”
吐き捨てた豹のセリフで一番引っ掛かった言葉は、藍楽でなく別の誰かに言われてるようで。
「やっぱり先輩は絵那さんが」
「黙れっ」
無言で自分を睨みつける豹の視線を藍楽は負けじと見据え続けた。
そこへ、
「あっ、二人ともこんなとこに居たんだ~」
何も知らない龍がのこのこと暢気な笑顔を貼り付けた駆け寄って来て、豹は壁についていた手を咄嗟に離した。
そんな二人のピリピリとした空気なんてもちろん感じるワケもなく。
「そうだ! さっき花井先輩に会ったんだ」
寧ろ、笑顔で絵那の話題を口にする龍はタイミングとしては最悪だった。
「今度生徒会に顔出してくれるって言ってたよ」
「ちょっと龍先輩……」
屈託の無い笑顔で嬉しそうに絵那の話をする龍を、藍楽が思わず止めに入りそうになる。
そんなことを言ったら豹が怒り出してしまうんじゃないか。

