そうこうしてる間に予鈴が鳴り、皇楽たちは移動教室すべく理科室へと向かっていった。
また二人っきりで残された豹の顔を藍楽はじっと見上げる。
そこにはさっきの恋する乙女フェイスからまた素に戻った豹の不機嫌そうな顔があるだけだ。
「もしかして、龍先輩を会長に推薦した先輩って絵那さんですか?」
「…………」
黙り込んでしまった豹は何よりの肯定に思えて仕方なかった。
藍楽の視線から顔を背け、豹がわざとらしく眼鏡を指先で直す。
黙り込んだ豹に弱点発見とばかりに勢いづいたのか。
「豹先輩って絵那さんのこと好きなんですか?」
「……はぁ?」
「だから龍先輩から会長の座を奪おうって……そんなの逆恨みです! 龍先輩は龍先輩なりに頑張ってるのに」
「黙れよ、ホントにウザい女だな」
畳みかけるように言葉を続けていった藍楽を、声色を低くさせた豹が壁に押しやる。
レンズ越しの瞳が冷たく藍楽を見下ろし、
「どいつもこいつも……そんなに龍がイイのかよっ!」
驚きで目を見開いた藍楽にこう言い放った。

