豹と絵那の意外な取り合わせに、皇楽の態度にむくれていたはずの藍楽がポカンとした表情で二人へと視線を向けた。
「お久しぶりです」
「この間、顧問に会ったら人手不足だって嘆いてたよ。龍くん大丈夫そう?」
「一応解決はしたんで」
絵那の問い掛けに答える豹の表情を藍楽がじっと見つめる。
そこにいつもの胡散臭い笑顔は無く、龍や藍楽に見せる厭味な笑いも無い。
ほんの少しばかり表情を固くして、でも微笑みを湛えた顔。
それはまるで……、
「恋する乙女フェイスだ」
「はっ?」
好きな人を見つめる乙女の恥じらう表情のようだと藍楽は思った。
ポツリと呟いた妹を不審そうに見下ろす皇楽を余所に藍楽は天へと向き直る。
「天さん。絵那さんって生徒会の人だったんですか?」
「うん。学校推薦欲しいからって去年まで生徒会に居たよ」
「それ言ってイイのかよ」
「なにが?」
「学校推薦欲しいからってヤツだよ」
「仕事はちゃんとやってたから大丈夫大丈夫」
「そういう問題じゃねぇよ」
皇楽の懸念など微塵も気にせず、天は他人事だと言わんばかりに気楽に笑っている。

