何かを言い返してやろうと口をもごもごさせる藍楽を、
「あっ、藍楽ちゃんだ」
「天さん!」
背後から呼び止めた声で勢い良く振り返った。
そこに居たのは教科書とノート片手に藍楽に手を振る天と見慣れた仏頂面。
豹に与えられたイライラを緩和させようと、天の懐に飛び込もうとすれば、
「来るな」
「もう! 皇兄邪魔!」
「邪魔はおまえだ」
隣からデカイ手のひらに遮られてムッと唇を尖らせた。
せっかく慶斗の目を盗んで早めの移動教室ついでに屋上でひなたぼっこでもしようってなったのに、天が藍楽を呼び止めたりするから不機嫌にもなる。
眉間のシワが深くなった皇楽と藍楽が唇を尖らせて睨み合いを始める。
二人を天が宥めるより早く、
「あれ? 珍しいメンバーだね」
可愛らしい笑顔を湛えた絵那が可愛らしい声で四人に声をかけてきた。
慶斗を撒いたのに絵那に捕まったと密かに溜め息を落とす皇楽に、絵那が意味深く笑いかけた後。
「久しぶり。豹くん」
やりとりを遠巻きに見ていた豹に、絵那がにこりと笑いかけた。

