純粋に弟を心配する兄を陥れようとする弟。
昨日の豹の冷笑は何度思い返しても腹が立った。
「龍先輩……あの」
「んっ?」
「実は……」
いっそのこと龍に本当のことを知らせておくべきでは無いのか。
豹を信頼しきっている龍を心配した藍楽が真実を口にしようとした時だった。
「龍」
「あっ、豹」
不意に姿を現した豹が龍と藍楽の傍らに立っていた。
コソコソと密談していた三人もご本人登場にすっかり口を閉ざし、豹の顔をまじまじと見上げている。
そんな居心地悪い空気も、
「顧問に呼び出されてたの忘れてるだろ」
「あっ! そうだった!」
「さっさと行くぞ」
胡散臭い程爽やかな笑顔を貼り付け、素知らぬふりで龍を促している。
「それじゃあ……」
椅子から立ち上がった龍が藍楽たちに軽く会釈しようとした瞬間。
「わたしも行きます!」
「えっ?」
「龍先輩と一緒に行きます! 雄兄お弁当箱よろしく」
「よろしくじゃねぇよ! これくらい持って行けっ」
龍の隣にガッチリついた藍楽が食べ終わったお弁当箱を兄に託した。

