おずおずと申し訳なさげにお茶を差し出す藍楽が新鮮で、口をモグモグさせた聖梨が小さく笑う。
「ホントだ。美味しい」
他人の色恋には積極的なのに、自分のことになったらこんなにも取り乱す藍楽が可愛らしく見えた。
言ったらもっと慌ててしまいそうだから、見て見ぬふりでだし巻き卵の感想を告げる。
それを察したのか、
「ひーちゃんってやっぱり優しい!」
「あははは。藍楽ちゃん、お弁当がこぼれちゃうよ」
立ち上がったままだった藍楽が聖梨の懐へと飛び込む。
勢いでガタガタと揺れた机を押さえながら、聖梨は藍楽の背中を宥めるように撫でた。
「何やってんだよ藍楽」
「……あっ」
「雄楽くん」
背後から聞こえた声で聖梨が振り返れば、異様なモノでも見たような変な顔をした雄楽が二人を見下ろしていた。

