だからそれをこんな風に他人にぶつけること自体が希有で、
「意地悪い言い方だったね。ゴメン、泣かないで」
「……っ」
こんな風に弱った自分を晒して人前で泣いてしまうなんて有り得ないと思っていた。
困ったように笑った豹が優しい手つきで藍楽の頭を撫でる。
触れられた瞬間、ピクンと体が反応して強張った。
やっぱりこの人は胡散臭い……。
苦手意識は膨らむのに、撫でられる手を咄嗟に拒めなかった。
兄達や天や聖梨、それに龍。
身近な年上たちとは違って、藍楽は豹には頭が上がらないと感じていた。
「高原さんは役立たずなんかじゃない」
「今更慰めは要りませんっ」
「だって生徒会には君が必要だから」
ニコッと優しく笑いかけられて、思わず頭の上の手を振り払う。
虚勢を張った藍楽の言葉を、笑顔の豹がサラリとした声で遮った。
余裕のある表情を浮かべ、藍楽が欲しい言葉を豹がくれる。
藍楽の虚勢が簡単に剥がれ落ちていく。

