「左遷って言い方はひどいな」
「だってそうでしょ。嫌がる人間を回わさなきゃ成り立たないんだから!」
「確かに人員不足に見兼ねて顧問の先生が取り計ってくれたけど」
「やっぱり左遷じゃない! 役立たずの人間を回すなんて……」
ムキになって豹に噛み付く自分に驚いた藍楽が我に返る。
眼前の豹はただそんな自分を見据えていた。
「…………」
豹の視線が気まずくてまた目を逸らす。
小さい頃はまだしも、最近では兄達に対してもムキになって怒ることなんてなかった。
クールな兄達に反して喜怒哀楽がわかりやすい藍楽だが、それは主に他人に対する時のモノがほとんど。
だから他人の恋愛に首を突っ込むのが楽しかった。
誰かの役に立てるのも嬉しかった。
しかし、自分に対する感情には鈍いことに藍楽自身は無自覚だ。

