「な、何でも無いですよ!」
「…………」
慌てて取り繕ってみせた藍楽を豹はただ真顔で見つめ続けている。
その表情が全てを見透かされてしまっているようで、藍楽は反射的に顔を背けた。
真っ直ぐに不器用な兄達や、天然ヘタレの癖に頑固な龍とは違う。
浮かべた表情と腹の中にイコールが見えない、なんだか掴み所の無い豹に藍楽は接し方に戸惑いを覚えていた。
「それじゃあわたし、弟のお迎えがあるので失礼しま……」
「今日は風紀委員会があるはずだけど?」
「っ…………」
「行かないの?」
取り繕いでついた嘘はアッサリと見破られてしまった。
しかも核心をつくように委員会の話題に触れられ、藍楽の弱った心が疼いていく。
「……先輩は知ってるんじゃないですか?」
「えっ?」
「わたしが風紀委員会から生徒会に左遷されるの」
瞳を大きく揺らした藍楽が三白眼で豹の顔色を窺う。

