会議室を出た後、行く当てのなくなってしまった藍楽はぼんやりと人気の無い廊下を歩いていた。


“役立たず”


頭の中を今し方委員長に言われた言葉が埋め尽くしている。


油断したら瞳の奥でジワッと熱くなった感覚が、今にも溢れ出してしまいそうだった。


立ち止まって窓の外に顔を向ければ、泣きそうな顔がガラスに反射して飛び込んできた。


「こんにちは」


「あっ……」


泣きそうな自分の顔とにらめっこしていた藍楽に背後から声がかけられる。


ハッとして振り向いた藍楽の視界には、


「……高梨先輩」


昨日と同じく、藍楽が胡散臭いと思った爽やかな笑顔を浮かべた豹の姿が入ってきた。


咄嗟に作り笑顔を浮かべようとしたけど間に合わず。


「何かあった?」


「えっ?」


「何だか落ち込んでるように見えたから」


眼鏡の奥の瞳を少し見開いた豹が、藍楽の顔を心配そうに覗き込んでいる。