「あれ……? なんで?」


生徒会室で資料の整理をしている龍の元だった。


来る途中に降り出した雨のせいで濡れた制服の端を手で払い、藍楽は会長用の無駄に立派な椅子に座った龍の元に歩み寄る。


怪訝そうに自分を見つめる龍の前に立ち、


「龍先輩が会長の責務を果たせるように、わたしが龍先輩の会長の座を守りますっ」


真剣な表情で切り出した藍楽に思わず目をパチクリとさせる。


それからふっと表情を崩し、


「わざわざそれを言う為に来てくれたの? 早く行かないと豹が待ちくたびれちゃうよ」


いつものヘラッとした笑顔を浮かべた龍が、壁にかけられた時計を指差してみせる。


時計の針はとっくに10時を過ぎていた。


「豹先輩は……龍先輩に会長を辞めさせる気です」


「えっ?」


「豹先輩は自分が会長になる為に龍先輩を辞めさせようとしてるんです!」


これを口にしてしまえば、豹を信頼している龍を傷付けてしまう。


そう思って言わずにいた言葉を藍楽は意を決して龍に告げた。