……傷、付けてしまった。


そう理解して豹に謝ろうと思うより早く、


「……俺には笑わない癖に」


「えっ……痛ッ!」


ポツリと呟かれた声と共に、耳たぶにビリッと電気が走っていた。


両手で熱くなった耳たぶを覆い、驚きと羞恥心で目の潤んだ藍楽を豹が一瞥して身を離す。


「日曜日……駅前に10時」


「……はっ?」


「お前が来なかったら本気で龍を会長の座から引きずり落としてやる」


そう言い捨てて豹はさっさと印刷室から出て行ってしまった。


吐き捨てるように残していった台詞は、デートの誘いには程遠い……ただの脅迫だった。


「……なんで」


そんなに龍に嫉妬しているのか……。


答えのわからない自問が藍楽の頭の中にひたすら渦巻いて、日曜日までひたすら離れることはないのだった。