「とにかく、私は恋をしたほうがいいらしいよ」
部活で疲れているから宿題ができない、という理由で私の宿題を写すために、うちに寄っている、幼なじみについ、愚痴をこぼす。
平田直哉は、私、大崎夏実(オオサキナツミ)の、幼なじみ。
生まれたときからずっと、家がお隣さん同士で育ったのだ。
当然、親同士も仲が良いから、まるで兄弟のように16年間、一緒にいる。
「ねぇ、直哉はさ、恋とかしたことある?」
唐突な質問に驚いたのが、シャーペンを持つ、直哉の手が止まる。
「あるよ」
そして、完全に書くのを辞めて、シャーペンを机の上に置いて、体ごと、こっちを向いた。
「直哉は、好きな人がいるってこと?」
いつになく真剣な顔をした直哉にちょっと驚いたのは私のほう。
なんだかその顔を直視できないで、さも、真剣に読んでいるかのように、持っていた漫画のページをめくった。
「そうだよ」
「ふぅん。恋ってどんな感じなの?」
この質問に、直哉はちょっと考えてから、それから、真剣に語り出した。
さすが、スポーツマンで、熱い人間の直哉。
あたしのどうでもいい質問にも、真剣に答えるんだね。

