そこは、視覚から感じえる不安を全てレイアウトして作られた箱庭のような町だった。

何時間も立ち尽くしているのに、空からははずっと夕焼けがあたしを照らし続けている。

雑居ビルと、電柱と、ところどころ錆びた常備薬の広告看板。

そして、陽炎のようにゆらゆらと消えては浮かび上がる通行人達。

夕焼けは、この街の統括者だと言わんばかりに全てを赤く燃やしていた。

あたしの体も例外なく、この町の物にしようという夕焼けの太陽が焼いている。

どのくらいこの場所に立ち尽くしているか解らない今

心なしかあたしの陰はあの通行人達のように少しづつ揺らめき始めたような気がしていた…。