「…悠李」

「どこで性別を間違ったんだろう…」

まさか、ルシアが女だとは…

隣で男に囲まれているルシアを見る。

あぁ、ルシアが知らない男に囲まれているのを見るだけで

「もう近寄るなぁぁあ!」


イライラする。

貧血も手伝って二倍イライラする。


「天川が怒ったぞー」
「天川が変だー」


そう言って逃げていく男共にチッと舌打ちする。


ルシアに群がるからそうなるんだよ。


怒鳴ったからか一気に体力を消耗した私はまた机に突っ伏した。

「大丈夫か?」

ポンポンと頭を撫でられる感覚に首を左右に小さく振った。

「無理。」


色んな意味で無理。


ダランと伸びた腕を無理矢理持ち上げて額に触れる。


「しんどいよー…慧大、血くれ…」

いつもみたいにそう言えば、

「俺のでいいならやるよ?」

慧大がいつもみたいに答えた。

「どうやって貰えばいい?」

血の足りない辛さは男にはわからないんだ。


慧大の差し出された腕に軽く歯を立てて噛みつけば、慧大がケラケラ笑った。


「血、飲みたくないんでしょ?」


傷がつかない程度の力で噛んだ腕は歯形しか残らない。

「前に飲んでみた時にまずかったから」


興味を削がれてルシアを見れば、ルシアは私を見て、笑ってた。


「…ルシアに笑われた…」

これほど悲しい事はない。