退屈な始業式も終わって私達はクラスに戻って来た。

いつも思うけど、どうして人気の無い先生程話が長いんだろう。
話を短く切り上げれば先生も生徒も楽だと思うんだけどな…。

「早く正義先生来ないかな、どんな人か見てみたい!!」
前の席の薫が振り返って楽しそうに言う。

「うん、話が短い人だと良いな。」

薫が一瞬きょとんとしてからおかしそうに笑って
「話が長いのは先生の特権だよ」
と言った。

普段は子供っぽいのに、薫はたまに大人びた話し方をするときがあってなんだか不思議。

そんな事を考えていると教室に先生が入って来た。

だぼだぼした大きめのスーツ
曲がってずれてるめがね
七三わけの髪型

正直言って第一印象は微妙…だった。

先生は何も言わずに黒板に大きく

松嵜正義

と書いて隣に

まつざき まさのり

と振り仮名をふった。

「なんだ、せいぎじゃ無いんだね。つまんないの」
薫が振りかえってつぶやいた。

「今年みんなの担任をする、松嵜正義です。
担当科目は英語です。皆さんが楽しく学校生活を送れるように頑張ろうと思っています。これからよろしく」

先生はそれだけ言うと出席をとりだした。

「笹!呼ばれてるよ!」

ぼんやりと窓の外を見ていた私は、薫の呼び声に驚いて前をみた。

クラス中の視線が私に集中してた。

「桂 笹!! 新学期そうそう欠席になるぞ。」
「すいません。」

出席簿片手に私を見ていた先生はおかしそうにつぶやいた

「名前、笹って言うのか?」
「…はい」
「パンダみたいだな。」
「…はい!?」

「先生ーそれいいね。」
「桂さんのあだなパンダな」

男子の大笑いと女子の忍び笑いの中で新学期始まってすぐ、私のあだ名はパンダに決まってしまった。