「なんもない」 「そっか」 それなのにふわりふわりと 巧は感触のない私の頭を 優しく撫でてくれる。 「バカやろう」 「なんでだよ」 「本当に巧か?」 「何疑ってんだよ」 なんだかいつもと違う。 「俺は男だぞ」 そうだね。 私は顔を上げ 巧に抱きついた。 ―が、ふわりと すり抜けてしまい 倒れこむ。 人の温もりを感じたいのに 感じる事が出来ない。 むなしくって もがき苦しんでいる 私が愚かで哀しくなってくる。