「着いた」
私たちは電車を降り
改札で捕まる事なく
駅を出る。
駅を出てから外れの
ほうに団地が広がっている。
私は手前のアパートに
入り、階段を上る。
いつもは無駄に響いていた
足音も静かだった。
古びた表札を確認し
ドアも開けずに中に入る。
玄関でもぅ
女の喘ぎ声が聞こえた。
「うそ…」
リビングを見て
ウメコは絶句する。
そこでは男と女が
重なっていた。
私も生きてたときは
こんなふうに幽霊に
観られていたのかな。
「彼氏。
出会い系で知り合った
暇つぶし相手」
一応、ウメコに紹介した。
ウメコには刺激が
強すぎたかもしれない。
「こんなの彼氏って
言わないよ」
ウメコは泣きそうな
声で訴える。
そうなのか?
私は少女マンガの
ような恋愛なんて知らない。
そんなの偽りで幻にすぎない。
みんなみんな
この目の前で
羞恥を犯す人間のように
醜く薄汚い。
「帰ろう」
ウメコは限界みたいだ。
目の前で喘ぐ女は
顔をひきつっている。



