桜りっぷ

「アイ、これも使って」

茉優のハンカチも
貸してもらう。

「ありがとう」

黒いシャツがべったりと
右腕に纏わり付く。

珈琲の香りが充満する。

「アイ、お前は
 濡れなかったか?」

「うん、私は大丈夫」

そこへ戻って来た
ウェイトレス。

「申し訳ございません
 
 どうぞ、タオル
 使ってください
 
 本当にすみません」

汚れたテーブルの上を
布巾で、パッパと片付けながら
彼女は浬に、何度も何度も謝る

「すみません

 本当に、すみません」