桜りっぷ

「キャー」

ウェイトレスの手元が狂い
カップから勢いよく零れた
珈琲は、浬の右腕、太股に
掛かる。

「うわ、熱」

熱くて堪らない、浬は
咄嗟に、珈琲で濡れた
シャツを捲くる。

着衣の下、身を潜めていた
黒龍が姿を現した。

茉優に、ウェイトレス
騒動に気づいた周りの客
浬の右腕に視線が集まる。

浬は、ベタリと肌にくっ付く
シャツの袖を伸ばし
もう一度、その腕を隠した。

「申し訳ございません
 
 今すぐ、何か拭く物を
 お持ちします」

ウェイトレスは、急いで
タオルを取りに戻る。

「カイリ、大丈夫?」

藍は、鞄からハンドタオルを
取り出して、シャツの上から
浬の腕を拭く。

「ああ」