桜りっぷ

車は、事務所の近くに停車した

車を降りた私は、開かれたまま
の助手席のドアから、車内を
覗き、貴方に告げた。

「ありがとうございました
 
 ドライブ
 とっても楽しかったです」

「俺も楽しかったよ
  
 ありがとう」

ドアに触れる、私の手。

静寂・・・

違う車から聞こえる
クラクションの音。

別れの時・・・

「じゃあ、さよなら」

「ああ、じゃあ」

私は、勢いよくドアを閉め
前へと歩き出した。

反対方向に走り出す車・・・

振り返らずに、私は歩いた。

たった一夜の恋だったけど
貴方の腕に抱かれて、私は
幸せを感じた。