閉められた扉の傍に立ち
浬の父、庵は二人の話を
全て聞いていた。

眠る、菫。

眠る、藍。

朝の訪れが、怖い。

朝から、降り続ける雨・・・

それは、まるで

花嫁の涙・・・

浬・・・

式場は、どよーんと暗く
誰も何も話さない。

新郎側の控え室は、皆
気が気じゃない。

正装した人々・・・

「あのバカ、いったい
 どこに行ったんだ?」

「ミキちゃん、私
 スミレの傍にいるね」

「ああ」

新郎の控え室で、今日
浬が着るはずの、白い
タキシードを見つめる
母、菫。