「ヒロ」

サイドテーブルの上に
置かれた、浬の腕時計。

昨夜、右手首に付いてた。

ううん、昨夜以前もずっと
浬の右腕を支配し続けて
きた、かっこいい腕時計。

茉優は、その時計に触れる。

やっぱり、重たい・・・

その時計を、細い手首に
付ける。

「ヒロ?」

「これ、ちょうだい」

「それだけは、無理だ」

浬の瞳を見れば、それが
大切な物だってすぐに分かる

「カイリ、貴方のこと
 私、好きになりかけてたの
 ・・・・・・
 その気持ち忘れてあげるから
 傷つけた代わりに、この時計
 ちょうだい
 ・・・私に、ください」

涙が、零れた。

「ああ、やるよ
 お前になら」