『琴音、向こうで待ってろ。お父さんと話をしたい』


幸太の…ただならぬ表情に、私は固まった。お母さんに引っ張られて部屋を出た。


『お父さん!幸太を殴らないでっ!』


襖の向こうに叫んだ


中は一旦静かになったものの…時々お父さんの怒鳴り声が聞こえて…


私は泣いてしまった。


お母さんは、優しく私の背中をなでながら


『お母さんは味方よ。大丈夫よ…。あの人、琴音のこと真剣なのね』



幸太…。幸太…。


襖が開いてお父さんが出てきた。


奥で土下座している幸太が見えた


『ゆるさないぞ…。好き勝手しやがって。琴音はまだ子供だっ。なにが、なにが婚約だっ』


『許して頂けるまで帰りませんっ』


幸太は…和室で土下座して動かない


私も…幸太と並んで土下座した。


『お父さん!ちゃんと勉強する。大学にも行く。仕事もする!ちゃんと大人になってから結婚する!だから…認めて…』


『気持ちなんか変わるもんだっ。婚約なんかに縛られていいのかっ?』


『大人になるまで…お父さんとお母さんの傍で勉強も生活もきちんとしたいの。だから…離れてる彼との約束が欲しいの…』



『整体師として一本立ち出来るまで…離れ離れです。だから…だから琴音さんとの約束をしたいんです。』


『だだの約束だ。そんなもの何にもならん。琴音、成績を下げたら交際はゆるさん。お前も。生活力もなければ一本立ちしたとて…琴音はやらん。』



そしてもうひとこと。


『琴音が高校卒業するまでっ、関係を持つことはゆるさんっ。それでも まだ言うか?』