俺は、訝しがりつつも病室内だし、むげに断る事も出来ずに、中庭のベンチに腰を下ろす事にした。


『なんでしょう?』


俺から切り出した。女性は、やや疲れた顔で、こう話しはじめた。


『こんなことをお願いするのは、本当に本当に恐縮なんですが……私の娘が肺癌で入院しているんです。……もう長くはないんです……。』


目に沢山の涙を溜めて。