それは事件の日、ヒロトがパソコンにむかっていた時に書いたものだった。



僕は末期のガンだと宣告されてから、この計画をたてた。何かしなくてはと思った。
死ぬのはとても恐い。けど僕が恐いのは、たった一人で死ぬという事だ。
親もいない。兄弟もいない。妻もいない。子供もいない。
僕が死んで誰か一人でも本気で泣いてくれるだろうか。
僕は、こんなにも母親が恋しいと思ったのは初めてだった。どこかで母親なんて。と思っていたが、今日出会った親子をみていると、息子がうらやましく思えた。
僕も抱き締めてほしい。ただそれだけで僕は笑顔で死ねると思うんだ。



そこで文は終わっていた。
あふれだす涙が、あとからあとから下に落ちていった


それから半年後。赤ちゃんポストは再開された。しかし、まだ預けられたニュースは聞いていない。
一つうれしい事に、あの事件のあと、赤ちゃんポストに預けた母親が自分が母親だと名乗りでてきたらしい。
彼らの強い思いが母親の心を動かしたんだと思った。

そして、もう一つヒロトに関してわかった事がある。あの事件のあと、私が父親かもしれないと一人の男性が名乗りでてきたらしい。